11月16日に<初級コース>第2回講座「構図とその表現」を行いました。
今回は、下絵師の北村さんと悉皆屋の熊谷さんのお二人をゲストに迎え、対談形式での授業となりました。
下絵師とは、着物の草稿を作る職人さんです。北村さんは中学校卒業後、丁稚としてこの世界に入り、今や60年のキャリアをもつ職人です。昔は図案から下絵を起こす流れが主流でしたが、今では図案屋さんがほとんどいなくなってしまい、下絵屋さんが図案師の仕事を兼ねている状態です。そのため、北村さんは「自分の引き出しを増やすこと」を大切にしています。言葉を絵にするには、相手が伝えてくることを形にして理解しなければならないからです。それには日ごろのスケッチが大変役に立つとお話ししていました。
悉皆屋とは、職人さんたちを回り商品を動かしていく、京友禅の制作全体を統括する人です。(悉皆屋というと洗い張りやシミ抜き屋さんと思う方もいるかもしれません。制作プロデューサーの染匠と、シミ抜き屋さんと、悉皆屋さんには2種類あり、どちらかをされているところもあれば両方されているところもあります。友禅の生産地である京都では、染匠を指す方が多いようです。)私たちメーカーは、この悉皆屋さんを通して職人さんたちと繋がっています。つまり、メーカーと職人の両者の特性を理解し、より良い仕上がりになるように制作ルートを組み立てて、回していく力が求められます。
京友禅の制作は分業制のため、多くの人の手を渡ってきます。良い仕上がりにするには、個々の技術はもちろん、チームワークも求められます。メーカーの好み、職人さんの個性、お互いに対する信頼感、そういったものが注文を受け仕事をこなすことで少しずつ積み重なり、長い時間をかけて“伝えずとも伝わる”無言のチームワークを築いていくのです。分業制には、危うさもあります。その反面で、腕の立つ意識の高い職人さんたちが無言のチームワークを組んだとき、予想を上回る仕上がりになる可能性もあるのです。
職人さんは直接ものを作っている立場にありますが、仕立て上がった着物にそでを通すお客様と対面する機会はほとんどありません。たった1枚の着物でも、その細部に職人さんたちの技術が詰まっています。講座の後半では、北村さんのお持ちいただいた日々のスケッチや、過去の草稿やひな形なども生徒の皆さんに見ていただきました。こうした数々の経験の上で、今の草稿が描きあげられてくるのです。普段は見えないきものの背景が、この回を通して少しでも伝われば嬉しいです。
次の<初級コース>第3回講座は、着付師の吉澤暁子さんをお迎えして「「装う」とは何か?」をテーマに行います。御来講、ありがとうございました。
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